こんにちは。JMAドローンスクール編集部 編集長の上高です。
建設・点検・測量・設備管理などでドローンの法人導入や内製化を進める際、「そもそも自社に国家資格(無人航空機操縦士)は必要なのか」「一等と二等のどちらを取らせるべきか」というご相談を数多くいただきます。
最初に結論をお伝えします。法人が最初に決めるべきは「資格を取るかどうか」ではありません。明確にすべきは、自社が行う飛行の形態(どこで、誰の上を、どんな方法で飛ばすのか)と、社内の運用体制(誰が操縦し、誰が安全を管理するのか)の2点です。
この順番を間違えて「とりあえず機体を買って資格を取る」方向に進むと、現場では許可・承認の手続きや事故対応が追いつかず、稟議が止まったり、案件に間に合わなかったりという経営課題に直結します。今回は、法人がドローンを業務導入する際の「正しい設計の順番」について整理します。
まず「飛行の形態」と「社内体制」を言語化する
法人のドローン運用は、趣味の延長では成立しません。理由は主に3つあります。
同じ点検・空撮でも、作業場所が人の往来する場所に近いだけで、必要な安全措置や申請の手続きが変わります。操縦者が1人とは限らない現場では、「誰がその飛行の操縦者か」を事前に明確にしないと事故の誘因になります。そして、法人案件には納期があります。許可・承認申請や安全書類の準備を後回しにすると、遅かれ早かれ現場が止まります。
こうした背景から、国家資格を検討する前に、まず次の5項目を社内で言語化してください。
- 何の業務で使うか(点検・測量・撮影・施工管理・警備など)
- どこで飛ばすか(敷地内・道路沿い・施設周辺・人の往来がある場所など)
- 第三者(業務に関係のない人)を飛行エリアに近づけない運用ができる現場か
- 何名が操縦する想定か(固定メンバーか交代制か)
- いつまでに運用開始が必要か
この5項目が固まれば、「どの飛行を、どんな安全設計で実施するのか」が自然と見えてきます。国家資格は、その設計を実行するための部品のひとつです。
申請と安全管理は後回しにできない
国家資格の検討を先延ばしにして最も困るのは、現場ではなく管理部門です。案件が動き始めてから、次のような問題が一度に発生します。
飛行許可・承認の審査には一定の期間が必要で、不備があれば追加確認が入り、予定日までに許可が下りないケースもあります。操縦者情報・機体情報・飛行計画・マニュアル・保険などの情報を部署横断で集める必要があるため、実務上は案件開始の3〜4週間前から動き始めることが現実的なラインです。
また、複数名で運用する場合は、飛行前に「誰が操縦者か」を確定させることが必須です。補助者(安全確認を支援する人)を配置する場合も、役割と操縦者との連絡手段を明確にしておく必要があります。これは形式的なルールではなく、突風や第三者の接近といった異常時に、操縦者が機体操作に集中できるようにするための実務的な事故防止策です。
一等・二等、法人としての判断軸
一等・二等で迷う最大の原因は、「どちらが上位資格か」という序列で考えてしまうことです。法人にとっての判断軸は、飛行させる環境の違いにあります。
一等は、第三者の上空を含む環境での運用を前提とした設計が求められます。二等は、「立入管理区画」を設けた環境での運用を前提に組み立てます。
「立入管理区画」とは、飛行エリアの周囲に業務に関係のない第三者が入らないよう管理区域を設け、現場の運用で安全を担保する考え方です。人の上を越えて飛ぶことを前提としない業務であれば、二等で成立するケースが多く存在します。この点を決めずに資格を選ぶと、取得後に「現場が想定と違って飛ばせない」という事態が起きます。
業務パターン別の現実的な判断

よくある3つの業務パターンから、実際の要否判断を整理します。
敷地内の点検・進捗管理が中心の場合
工場やプラントの敷地内、建設現場内での撮影など、第三者が飛行エリアに入らない状態を作れる環境であれば、まずは二等から設計するのが合理的です。目視内で完結するなら、限定変更が不要な場合もあります。ただし、出入口が複数あるなど敷地境界が曖昧な場合は、補助者の配置やコーン等による確実な立入管理区画の設計が必要になります。
線状構造物・広域点検で目視外が混ざる場合
橋梁や送電設備など、移動しながらの点検では「二等+目視外の限定変更」で設計するケースが多くなります。目視外飛行は操縦者が機体を直接見ない分、補助者との監視・連絡・緊急時対応の体制を固定化しないと事故リスクが高まります。限定変更は「取っておけば便利」ではなく、社内体制が揃って初めて意味を持ちます。
第三者上空を含む運航が業務要件に入る場合
第三者の直上を避けられない業務要件であれば、一等を前提とした体制設計が必要です。資格区分の問題にとどまらず、機体選定・運航管理・緊急時対応・保険まで含めて、会社全体の「運航の仕組み」を高いリスク水準に合わせて構築する領域になります。
社内運用体制の設計:最低限の5つの役割
「飛ばせる人」を増やすだけでは法人業務は回りません。運航はチームプレーであり、役割を事前に明確にする必要があります。
- 運航管理(責任者):飛行の可否判断、リスク評価、体制・手順の承認
- 操縦者:操縦と安全判断の当事者(飛行ごとに確定させる)
- 補助者:監視・連絡・周辺管理
- 機体管理:バッテリー・プロペラ・整備履歴の管理
- 申請・記録担当:DIPS手続き、飛行計画・記録、帳票の保管
公共案件や企業間取引では、「安全に運用している証跡」が求められるケースが増えています。飛行計画・リスク評価・安全対策の実施記録・機体点検記録・飛行ログ・教育記録などをテンプレート化し、現場が無理なく回せる仕組みを作ることが内製化の鍵です。
申請システム(DIPS)の運用で詰まりやすい点
国家資格や航空法の手続きは、国土交通省のオンラインシステム「DIPS」に集約されます。法人は「誰がアカウントを持ち、どう情報を管理するか」を設計しておかないと、手続きが特定の担当者に属人化します。
機体や操縦者情報を後から編集しても、作成済みの申請書には自動反映されません。編集後は申請書を作り直す必要があるため、社内での手順の標準化が必須です。また、申請作業中に60分以上操作を中断するとやり直しになるため、まとまった時間を確保して一気に申請する運用が現実的です。
よくある質問
Q. 何名から国家資格取得を始めるべきですか?
まずは運航体制が回る最小人数からです。操縦者だけ増やしても、管理や補助の体制が回らなければ現場は成立しません。最初は少数で標準手順を固め、案件に合わせて増員するのが失敗しない進め方です。
Q. 外注と内製、どちらが得ですか?
短期的には外注が速いですが、案件数が増えるにつれてコストが膨らみます。内製は初期投資が必要な反面、標準手順が固まれば品質・納期・情報管理で強みが出ます。年間の飛行回数と、社内に運航管理・安全の仕組みを作れるかどうかが判断基準になります。
Q. 一等・二等の違いがよく分かりません。
法人にとっての違いは肩書きではなく、「想定する運航リスク」と「その運航を成立させる要件」の差です。まず飛行シーンと安全対策を整理し、その要件に合う区分を選ぶのが最短ルートです。
資格区分の判断や社内体制の設計でお悩みの法人担当者様は、JMAドローンスクールの無料相談をご活用ください。事業内容をヒアリングした上で、最適な資格取得プラン・社内運用体制・概算費用まで整理してご提案します。
無料相談のお申込みはこちら https://jmadrone.stores.jp/reserve/jma/2597694
著者:JMAドローンスクール編集部 編集長 上高寛之 一般社団法人日本マルチコプター協会(JMA)は、国土交通省登録講習機関として全国で二等・一等無人航空機操縦士の国家資格講習を実施しています。制度・講習・受講区分に関するご相談は無料相談窓口にてお気軽にどうぞ。


