国土交通省の「無人航空機の飛行の安全に関する教則」が、令和8年(2026年)7月7日に第5版として改訂され、7月14日(火)から適用されます。今回の改訂は、法令改正や制度運用の見直しを反映したもので、ドローンを飛ばすすべての方に関わる実務上のルール変更と、無人航空機操縦士の学科試験の出題範囲変更の両方を含みます。本記事では、主な変更点5つと試験への影響をわかりやすく解説します。
学科試験はいつから教則第5版準拠になる?

学科試験の準拠版は受験日で切り替わります。
- 令和8年7月13日(月)までの学科試験 → 第4版準拠
- 令和8年7月14日(火)以降の学科試験 → 第5版準拠
7月14日以降に受験される方は、お手持ちの第4版準拠テキストに加えて、以下の変更点を必ず押さえておきましょう。
変更点1:ドローン保険が「推奨」から「必須」に(25kg以上・レベル3.5飛行)

ドローンの保険は自動車の自賠責のような強制保険がなく、これまで加入は基本的に「推奨」でした。第5版では、カテゴリーⅡ飛行のうち総重量25kg以上の機体を飛行させる場合、またはレベル3.5飛行を行う場合には、不測の事態に備えて十分な補償が可能な第三者賠償責任保険への加入が「求められる」ことが教則本文(2.3.3)に明記されました。リスクの高い飛行について、保険が事実上の必須要件として位置づけられた形です。
試験対策としては、「すべての飛行で保険が必須」という選択肢は誤りである点に注意してください。必須級となるのは上記の特定の飛行です。
変更点2:工業専用地域はDID(人口集中地区)規制の対象外に

これまで人口集中地区(DID)の上空を飛行させるには、国土交通大臣の許可が必要でした。第5版では、都市計画法第8条第1項第1号に基づく「工業専用地域」内の区域であれば、DIDに該当していても許可手続き等が不要になったことが反映されています(3.1.2)。工場・プラントの点検など産業用途での活用が進めやすくなる緩和です。
ただし注意点があります。免除されるのはあくまで「DIDに係る許可」だけです。機体登録、リモートID搭載、夜間飛行や目視外飛行などその他の規制は引き続き適用されます。「工業専用地域なら何でも自由」ではありません。試験でもここがひっかけポイントになりそうです。
変更点3:要件を満たすドローン農薬散布等は承認申請が不要に

航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により、同号で定める要件を満たして農薬等の空中散布などを行う場合には、夜間飛行・目視外飛行・第三者から30m未満の飛行・危険物輸送・物件投下に係る承認手続き等が不要になりました。
要件のポイントは、機体認証(第二種以上)を受けた機体を技能証明(二等以上)を持つ操縦者が飛行させるなど、機体と操縦者の両方の条件を満たすことです。「認証機体だけ」「資格保有だけ」の片方では免除されません。掛け合わせ(AND条件)である点を必ず覚えておきましょう。詳細な要件は国土交通省の通達で定められているため、実際に散布を行う方は最新の通達をご確認ください。
変更点4:技能証明の更新申請期間が厳格化【試験最重要】

無人航空機操縦士の技能証明(有効期間3年)の更新申請期間が変わりました。
- 旧(第4版):有効期間満了前6ヶ月以内に申請(満了日直前まで申請可能)
- 新(第5版):有効期間が満了する日の6ヶ月前から1ヶ月前までの間に申請
つまり、満了日ギリギリの「駆け込み更新」ができなくなりました。満了まで1ヶ月を切ると更新申請ができません。なお、更新には登録更新講習機関が実施する無人航空機更新講習を申請日以前3ヶ月以内に修了している必要があります。数字を問う問題として学科試験で最も狙われやすい変更点です。実務上も、更新を予定している方は早めのスケジュール確認をおすすめします。
変更点5:小型無人機等飛行禁止法のイエロー・ゾーンが300m→1000mに拡大

国会議事堂、内閣総理大臣官邸、皇居、外国公館、防衛関係施設、空港、原子力事業所などの重要施設の周辺では、小型無人機等飛行禁止法によりドローンの飛行が禁止されています。同法の一部改正により、重要施設の周囲の飛行禁止区域(イエロー・ゾーン)が、従来のおおむね300mから「おおむね1000m」へと大幅に拡大されました。
この法律は航空法と異なり、100g未満の機体(模型航空機)も規制対象になります。罰則(拘禁刑・罰金)の対象エリアが大きく広がるため、都市部で飛行させる方は飛行前のエリア確認がこれまで以上に重要です。対象施設の詳細は警察庁ホームページ等で確認できます。
まとめ:第4版と第5版の比較表

| 項目 | 第4版(旧) | 第5版(新) |
|---|---|---|
| 保険 | 任意加入(推奨) | 25kg以上・レベル3.5飛行は第三者賠償責任保険が必須級 |
| 工業専用地域 | DIDなら許可必要 | DIDでも許可不要(他の義務は継続) |
| 農薬等の空中散布 | 承認手続きが必要 | 機体認証(二種以上)×技能証明(二等以上)等の要件で承認不要 |
| 技能証明の更新申請 | 満了前6ヶ月以内 | 満了の6ヶ月前〜1ヶ月前まで |
| 飛行禁止法イエロー・ゾーン | 周囲おおむね300m | 周囲おおむね1000m |
よくある質問(FAQ)
Q1. 第4版のテキストで勉強してきましたが、買い直しが必要ですか?
買い直しは必須ではありません。第5版の改訂は差分が限定的なため、第4版準拠テキストをベースに本記事の5つの変更点を読み替えて学習すれば対応できます。
Q2. 7月13日までに学科試験を受ける場合はどうなりますか?
令和8年7月13日(月)までの学科試験は第4版準拠で実施されるため、従来どおりの知識で受験できます。第5版準拠になるのは7月14日(火)以降の試験です。
Q3. 技能証明の有効期限が近い場合、いつまでに更新申請すればよいですか?
有効期間が満了する日の6ヶ月前から1ヶ月前までの間に申請が必要です。満了1ヶ月前を過ぎると申請できないため、更新講習(申請日以前3ヶ月以内に修了)も含め早めに準備してください。
Q4. イエロー・ゾーンの拡大は100g未満のトイドローンにも関係ありますか?
関係あります。小型無人機等飛行禁止法は航空法と異なり機体の重量を問わないため、100g未満の機体も重要施設の周囲おおむね1000mの上空では飛行できません。
おわりに
今回の改訂は、規制緩和(工業専用地域・農薬散布)と規制強化(保険・更新期間・イエロー・ゾーン)の両面を含むバランスの取れた見直しです。7月14日以降に学科試験を受験される方は本記事の5点を重点的に確認し、既にドローンを運用中の方も、特に更新申請期間とイエロー・ゾーン拡大は実務に直結しますので、早めの対応をおすすめします。
※本記事は「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版・令和8年7月7日改訂)」に基づいて作成しています。最新の正確な情報は国土交通省の公式サイトをご確認ください。

